ボルドーワイン:春の霜で奪われた2017ヴィンテージ

2018年2月7日 La Revue du vin de France のWebサイト より

昨年春の度重なる霜の影響で、ボルドーでは2017ヴィンテージを生産できないシャトーもある。

「難しいね、通常の売上の90%の損失だから。」バルザックのシャトー・クリマンのテクニカルディレクター、フレデリック・ニヴェル氏は、空のセラーを眺めながら嘆く。4月の霜で大打撃を受けたソーテルヌの名高いシャトーは、2017ヴィンテージを諦めることとなる。
前回シャトー・クリマンを発売できなかったのは1993年、それ以降は発売できなかった年はなかった。「(2017を諦める)理由は二つある。質と量だ。まずまずのロットが9つあるが、クリマンをつくるには不十分だ。ポテンシャルは高かったのに、残念だ。」

生産者5人に1人は70%以上の収穫減

収量は20hl/haから僅か2hl/haへと減少し、現在セラーにあるのは約30樽 (9000本) のワイン。解決策は、と聞くと「在庫を持つことと、後ろからついてくる銀行家」と言う。「でも、こんなことが2年も3年も続くのは絶対ダメだ。」
昨年春の霜は、ボルドーの全てのアペラシオンに被害を与えた。ジロンド農業会議所によると生産者5人に1人が70%以上の収穫減ということだが、立地条件が良かったり、霜から保護できたりと、畑によっては全く影響がなかったところもある。
ソーテルヌ周辺では、シャトー・クリマンのように標高の低い区画の被害が大きかった。
しかし標高の高い畑は霜の被害を免れ、イケムやリューセック等は窮地を逃れた。逃れただけではない。ソーテルヌ・バルザックの保護団体(ODG)の代表、グザヴィエ・プランティ氏によると「ボトリティスの発達が見事で、素晴らしいヴィンテージ」との予測だ。

霜保険?

他の多くのシャトー同様、クリマンでも霜による損害をカバーする保険には入っていなかった。1991年以降ボルドーは霜害に見舞われておらず、稀にしか起こらない災害の備えにしては高すぎるからだ。ごく稀に保険をかけているシャトーもあるが、収支は合わないようだ。保険をかけていたシャトー・ギローでは、40%収穫を失ったにもかかわらず、保険金は受け取っていない。なぜかというと、保険の支払いは平均収量に基づいて計算されるので、ソーテルヌの甘口ワインの収量はそれに達しないからだ、と、シャトー・ギローのオーナーの一人でもあるグザヴィエ・プランティ氏は説明する。
ソーテルヌ・バルザックのアペラシオンでは、平均で収穫の50%を失った。有名で、広大な畑を持つシャトーは、他よりはこの事態を上手く切り抜けられている。それは「銀行が後ろからついてくる」からだ、と話すのは、あるビオの生産者。しかし、ソーテルヌで50ha以上の畑を有するのは、173のシャトーのうち10にも満たないのが現状だ。
被災したワイン生産者救済団体“SOS Vignerons sinistrés”の調査によると、2018シーズンの資金調達が出来ない恐れがあるぶどう園は、ジロンド県で300から400になるという。その大半は、ほぼ無いに等しい2017年の僅かな収穫を、今後数ヶ月の間にバルクで売りに出さなければならなくなるかもしれない。

銀行の貸し剥がし

「年が明けると1月3日から、銀行は資金の回収を始めている。短期貸付の返済を期限到来前に迫る書留が送られている。」 救済団体の代表、フローレンス・カルドソ氏は「どうしたら良いかわからず、皆が途方にくれている」と話す。
不吉な予兆もある。いくつかの区画では冬の剪定が行われておらず、オーナーが (定年が近く跡継ぎがいない場合は特に) ワイナリーを放棄してしまうのではないか、と懸念する生産者達も多い。
続けられないことを既に悟っている人もいる。「会社更生の手続き中だったが、今回の霜で全てが終わってしまった。価格は上がったが、この状態を切り抜けられるほどじゃない。倍にでもなったら助かったのに!」40代の男は、匿名でこう打ち明ける。「収穫の60~65%を失った。今の状況から抜け出すには全部必要だったが、これじゃ足りないだろう。」

2018年02月16日