2020プリムール価格と分析

ボルドー復活: 2020プリムール価格と分析
シュヴァル・ブラン、アンジェリュス、レオヴィル・バルトンがプリムール販売を開始。ワイン愛好家はどこに価値を見出すか?
By Mitch Frank, Cassia Schifter
May 20, 2021

1年前パンデミックが猛威を振るう中、ボルドーのシャトーがどうやってプリムールキャンペーンを実施し、最新のヴィンテージを販売するのか、予測をするのも難しかった。しかし彼らはうまくやり抜けた。そして現在、2020ヴィンテージのプリムールキャンペーンが始まっており、主要なマーケットの状況は改善しているとは言え、例年とは全く状況は違うようだ。

アメリカのワイン愛好家やワイン商は、トップシャトーが昨年のように、大幅な値上げをしないかどうか興味津々だ。昨年は世界経済が不透明なため、多くのシャトーが価格の上昇をかなり抑えた。強いドルも助けとなり、有名なワインの多くは売れ行きが良かった。

経済は依然として不透明だが、今後半年でワクチン接種が加速し制限が緩和されることで、強い経済成長がもたらされる兆しがある。お金持ちはお金を使いたがっているのだ。これはボルドーのワイン生産者に、過去数年に見られた大幅な値上げが可能と、確信させるだろうか?

アメリカのバイヤーにとっては大きな落とし穴がある。ドルが今年ユーロに対して弱いことだ。つまり、シャトーが去年と全く同じプリムール価格でリリースしたとしても、アメリカ人はより多く支払うことになってしまうのだ。良い面はないか?ある。アメリカ政府がフランスワインへの関税を一時停止した為、大きな追加費用が削減されたことだ。

先週シュヴァル・ブランがプリムールキャンペーンを開始し、大成功を収めた。例によって売り出し価格がほとんど決まった中、市場に出た最初のビックネームとなった。2020の売り出し価格は1本あたり380ユーロ(exネゴシアン)で 、2019より2.7%上昇した。アメリカの大手小売業者の現在の平均価格は1本575ドル、1ケース6900ドルで、2019と比べ16%の上昇となる。安いとは言えないが、2015と2016の現在の市場価格(それぞれ849ドル、860ドル)より30%以上安くなっている。

今週はアンジェリュス、パヴィ、レオヴィル・バルトンがキャンペーンに加わった。アンジェリュスは大胆だった。これはサン・テミリオンの最高格付に昇格してからの傾向だ。売り出し価格は1本あたり260ユーロ(exネゴシアン)で 、2019の初値、230ユーロから13%の上昇だ。アメリカの大手小売業者はこれ1本379ドルで提供、2019と比べ23%の上昇だが、2015と2016の現在の市場価格より15%安い。  

アンジェリュスの隣人、サン・テミリオンのシャトー・パヴィの2020の売り出し価格は1本あたり240ユーロ(exネゴシアン)、2019と同じ価格だ。アメリカの小売業者の価格は339ドル、2019よりわずかに高いが、2015と2016の現在の市場価格と比べ20%以上も安くなっている。右岸のファンにとってはお買い得で先が楽しみだ。

左岸ではレオヴィル・バルトンがリリースした。2020の売り出し価格は1本あたり60ユーロ(exネゴシアン)で 、2019より16.3%の上昇だ。大手小売業者はこれ1本平均88ドル、1ケース1056ドルで提供している。2019と比べ約20%の上昇だが、2015と2016の市場価格より40%安い。

さて、ワインの出来はどうか?

2020ヴィンテージのクオリティの評価はまだ完全ではない。業界の中にはトップシャトーのバレルサンプルを試飲できた者もいるが、決して多くはない。世界中にサンプルを送ろうとしたワイナリーもあるが、結末はさまざま。このようにサンプル出荷に一貫性が無い状況を踏まえ、ワイン・スペクテイターでボルドーワインの主任テイスターを努める、シニアエディターJames Molesworth氏は、注目すべき全てのワインの公式のブラインドテイスティングが実施できるようになるまで、テイスティングを延期することを決めた。

2020年のぶどうの成長期の天候は完璧ではなかった。非常に雨の多い冬で、畑は多くの水を蓄えたが、雨は春になっても続き、カビや病気を引き起こす恐れがあった。その後暑く乾燥した季節を迎えたが、左岸では8月中順に大雨が降った。一方右岸では大部分で乾燥したままだった。収穫は早かった。暑さが拍車をかけたのだ。収穫量は2019年と比べ20~40%の減少だ。大手生産者はMolesworth氏に、左岸より右岸が良く、不均一なヴィンテージだ、と話した。

2021年05月20日