ブルゴーニュの (気候の) ニューノーマル

Burgundy’s New (Climate) Normal
A tasting of 2003 Pinot Noirs and Chardonnays shows how well growers are adapting to warmer vintages

By Bruce Sanderson From the Aug 31, 2023, issue


ブルゴーニュの (気候の) ニューノーマル 
2003 年のピノ・ノワールとシャルドネのテイスティングでは、温暖なヴィンテージにいかに生産者がうまく適応しているかが示された。

ワイン・スペクテーター誌のシニア・エディター、ブルース・サンダーソン氏が、歴史的猛暑に襲われた2003年のブルゴーニュワインが20年経た今、印象的な熟成を遂げていると報告している。

気候変動は、世界中のワイン生産者にとって今やよく知られたブギーマンだ。ブルゴーニュでは1990年から暖かい年が何年か続いたが、重大な変化がこの地域を襲ったのはここ20年のことである。

2003年のブドウの生育期は、多くの生産者に甚大な影響を及ぼした。皆不意をつかれ慌てて収穫を始め、畑からセラーにブドウを運ぶためのトラックを借りるのに必死になった。収穫はその時点で1893年以降最も早いものとなった。8月中旬に収穫を始めたところもあれば、雨でブドウ樹が生き返るの待ち望み、8月末まで待ったところもあった。

2005年1月の「ルールを破るブルゴーニュ」というタイトルのコラムで私は、「ブルゴーニュについて知っていることを全て忘れてほしい。2003ヴィンテージはゲームのルールを変えてしまった。生産者もネゴシアンも誰もこのようなヴィンテージを経験したことがなく、関係者の多くはどのように対処するか悩んでいた。」と書いた。

2004年6月と2005年1月に、セラーで300種類以上の赤ワインと白ワインのテイスティングをした後、2003年の最高のワインは1947年や1959年のような伝説的なワインになるだろう、と確信した。メゾン・ルイ・ジャドのワインメーカー、ジャック・ラルディエールは私に、「グレイト・ヴィンテージはいつも酸度が低い。重要なのはアントシアニンとタンニンのバランスにある。」と言った。

なぜ2003年がこれほど良い年になったのだろうか?自然はきわめて重要な方法で、この極端な状況を補ったのだ。まず収量だが、平均して通常のヴィンテージの半分だった。ピノ・ノワールはとても熟したが、密度が濃く熟したタンニンに支えられていた。そして健康で、色が濃く風味は凝縮されていた。選別では、日焼けしたブドウは廃棄されたが通常より問題はなく、そして、収穫時期と醸造方法が、「収穫は早い時期に、抽出はわずか、もしくは全くしない」と決定されると、エルヴァージュは比較的簡単だった。

白ワインは話が違ってくる。非常によく、最高のワインは傑出する可能性もあるが、赤ワインには及ばない。一般的な見解は、白ワインは時間がたつにつれて良くなる、というものだった。しかし当時、白ワインを専門とするほとんどのドメーヌでは、白は若飲み用と勧めていた。

2013年にブルゴーニュを訪れた際、私は生産者らに、10年を迎える2003年ヴィンテージの赤ワインをテイスティングさせてもらった。テイスティングしたほとんどのワインは、とてもゆっくりと熟成しているように見えた。そして今年の2月、20年を経たそれらのワインがどのような味わいになっているか、とても知りたくなった。そこで、北はジュヴレ・シャンベルタンからコート・ドール南端のシャサーニュ・モンラッシェまで、赤ワイン8種、白ワイン6種、計14種類のワインをブラインドではなくテイスティングした。結果、すべてのワインが傑出した(90-94点)、もしくはクラシック(95-100点)という評価だった。私は、赤ワインはしっかりしていてこの先も十分熟成を続けられるのでは、と期待していたのだが、赤だけでなく全体的に楽しめるものだった。

熟した、時には過熟気味のプラムやシロップ漬けのチェリー、フルーツケーキ等の香りが際立つ。最高のものはバランスとフレッシュさを持ちあわせ、動物やミネラルの要素を伴った、森の下草やスパイスの風味を感じられた。

ルイ・ラトゥールのシャンベルタン・キュヴェ・エリティエ・ラトゥール(95年)はまだ若々しくフレッシュで、同じくルイ・ラトゥールのコルトン・シャトー・コルトン・グランセやロマネ・サン・ヴィヴァン・レ・キャトル・ジュルノーほど熟成が進んでおらず、果実味とミネラルの風味が凝縮されている。ルイ・ラトゥールの醸造責任者、ジャン・シャルル・トマは、収穫の開始は8月16日だったと回想する。「リンゴ酸がなく、発酵後もワインにあまり変化がなかった。アルコール度数と濃度が高いため、ワインの熟成がゆっくり進んだのだ。」と説明した。コート・ド・ボーヌではルイ・ジャドのボーヌ・クロ・デ・ジュルシュル(93年)とジョゼフ・ドルーアンのボーヌ・クロ・デ・ムーシュの赤(92年)が印象的だった。

大きな驚きは、白ワインがどれだけ素晴らしく熟成したか、ということだ。試飲したワインは意外な新発見であった。ヴェロニク・ドルーアンと私は、ボーヌ・クロ・デ・ムーシュの白(95年)を試飲した後、満面の笑みを浮かべた。ヘーゼルナッツ、トーストしたブリオッシュやトフィーの驚くべきブーケが特徴で、風味はアプリコットやピーチ、トースティーフィニッシュで余韻は長かった。コルトン・シャルルマーニュも優雅な熟成を遂げている。コルトン・シャルルマーニュではルイ・ラトゥール(95年)やフェヴレ(95年)が優れている。ルイ・ジャドのムルソー・シャルム(94年)は花やヘーゼルナッツ、ミネラルや蜂蜜の香りを放ち、テクスチャーが豊かだった。

ブルゴーニュの生産者は、影響を軽減する技術を畑やセラーに取り入れて、温暖化する季節にうまく適応している。ブドウ樹は暑さや干ばつに直面しても立ち直りが早い、との報告も多い。もし過去20年が我々に何かを示しているとしたら、それはブルゴーニュが他のワイン産地と同様に、気候変動から恩恵を受けているということだ。



2023年08月10日