暑さのため収穫は早まり、ワインはより凝縮される
La Revue du vin de France Événements Vendanges
Avec les chaleurs, des vendanges bousculées, un vin plus concentré
ラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス Événements Vendanges
暑さのため収穫は早まり、ワインはより凝縮される
2023年9月8日 larvf.com 編集部
ぶどうの収穫時期はズレ、ワインのアルコール度数は上がり、収量はおそらく減少。フランスで猛威を振るっている熱波は、ぶどう畑にも影響を与えている。
「手での収穫でも、機械を使っての収穫でも、暑さは作業できる時間を奪ってしまう。」フランスぶどう・ワイン研究所ヌーヴェル・アキテーヌ地域圏局長でエノログのロール・カイラ氏はこう説明する。炎天下の午後、収穫人は収穫の作業ができない。収穫機を使うワイン生産者の中には、夜の終わりか一日の始まりに集中して収穫を行う者もいる。
収穫から醸造所に到着するまでの間にぶどうが熱くなりすぎると、酸化のリスクが高まり、制御不能な発酵が始まり、いくつかの香りを生じさせる前駆体が変質してしまう、モンペリエにあるフランス国立農業・食糧・環境研究所(Inrae)の主任研究員、ジャン・マルク・トゥザール氏はこう説明する。
つまり、暑さは現行の収穫方法に影響を与えるということだ。機械での収穫は手作業に比べて繊細ではないものの、機械は夜間も稼働させることができる。一方人間は傷を負うリスクがあるので暗闇での手作業はできない。ぶどうが熱くなりすぎてしまった場合、生産者は醸造所に到着したぶどうに二酸化炭素を注入して冷やす、という選択もできる。
フレッシュさ不足のワイン
より一般的に言うと、熱は熟成という現象を加速させるのだ、とロール・カイラ氏は話す。アルコール度数を決定する糖分の増加がより早くなり、同時に、ワインの酸味、つまり味わいに影響を与えるリンゴ酸の含有量が減少する。そのため、生産者はすでに収穫のスケジュールを早めるようになっている。この「アルコール度数が高く酸が少ない」ワインは、消費者が期待する味わいや官能的品質に応えるよう、醸造所で調整することができる、とロール・カイラ氏は強調する。例えばより晩熟な品種とのブレンドや、酸の含有量を変更してワインにフレッシュさを与えることが、特に白ワインでは慣行となっている。
高温に対して、ブドウは品種によって受ける影響も変わってくる。「ソーヴィニヨンはほぼ全て収穫されている。」ロール・カイラ氏はこう指摘し、「通常であれば9月15日くらいまで焦ることなく収穫を待っているのだが、現在生産者たちはメルロの収穫に追われている。凝縮が進んでいるからだ。カベルネは晩熟なので特に大きな影響はない。」と付け加えた。
少ない収穫量
非常に暑い時にぶどうの房がまだ収穫されず樹の上にある場合、水分が蒸発しやすくなりぶどうが萎れてしまう。そして実のサイズが小さくなる。「おそらく、地域によっては平均収量の僅かな低下をもたらすだろう。」とジャン・マルク・トゥザール氏は述べ、遅霜と雹に見舞われ収穫量に影響が出た2021年ヴィンテージが繰り返されるという考えは除外した。
しかし「収量が多少減少し、糖分が多く、つまりアルコールが高くなることは、必ずしも悪いことではない」とトゥザール氏指摘した。
ぶどう畑・ぶどう栽培が適応していくことが必要不可欠
長期的にぶどうの成長サイクルを変化させ、収穫時期が前倒しされる気候変動を背景に、熱波はより頻繁に、より激しく、そのうえより広範囲に及ぶだろう、とジャン・マルク・トゥザール氏は言う。さしあたっては、ワイン生産者は常に敏感でなければならず、必要に応じて迅速に収穫を開始し、それに応じた醸造技術を適用する必要がある。
その後は、同じ地域より多様なブドウ品種を取り入れ収穫時期を分散させたり、剪定方法や土壌、灌漑の新しい方法等、もっと根本的な変化が必要になるだろう。
(AFP通信社配信)