ボルドー: 10年経た2009ヴィンテージを振り返る ‐ 今が飲み頃?

ボルドー: 10年経た2009ヴィンテージを振り返る ‐ 今が飲み頃?
Lisa Perrotti-Brown
15th Mar 2019 | The Wine Advocate | March 2019 Week 2

ルーベンスの絵画に描かれた官能的なモデルのように、2009年は最初から華やかなドレープで飾られていた。濃厚で華やかで官能的であることは否定できないとの所見で、疑う余地なく多くの賞賛を送る批評家もいたが、賞賛を送りながらも2009年の浮かれたフルーツの祭典に眉をひそめる者もいた。その後2010年がやってくる。こちらも偉大なヴィンテージとなるのだが、内向きで先が予測しにくいストラクチャーにもかかわらず、専門家の間ではすぐに、どちらがより優れたヴィンテージか、と評価が対立した。

瓶内熟成を経た今となっては、どちらの年も膨大な量のトップ品質のワインを生産していることをかんがみても、2009年と2010年が2つの素晴らしいヴィンテージであるのは紛れもない事実だ。しかし、最終的には2010年の勝利を時が証明するだろう、と主張する専門家もいる。個人的には、ちょっとした知識はかえって危険なものだという格言は言うまでもなく、ストラクチャーがしっかりすればしっかりしたワインになる、というような大雑把な一般論には僅かな真実しかないが、好みのスタイルのファサードとしての役目は果たせると思う。変化する様相を呈するまでに何年もかかるワインは、ボトリング後すぐに良いところを見せるワインより優れているというわけではない。誤解しないで欲しいが、瓶内熟成は、絞りたての果実味溢れる若いワインには存在しない複雑な層を与え、アロマや風味の化合物が他の全ての領域を広げてくれる。しかし、偉大なワインは苦労なしには得られない、という考えは、驚くほど複雑で非凡な表現を可能とする最高の結果をもたらす領域へ導く、無数にある素晴らしい不確定要素をあまりにも単純化しすぎている。

2009年か2010年かという問題から少し離れるが、ワインコレクターにとって真の問題は次のことだろう: ベストな2009ヴィンテージは、いつ最高の結果をもたらす領域に到達するのか?そのパーティーはいつまで続くのか?そして、それを待つ間に、もっと良いことがもたらされるのか?

今年の2月、私はロンドンで開催されたBI Wine(旧Bordeaux Index)の2009ヴィンテージのテイスティングに参加した。10年経たボルドーワインをテイスティングする毎年恒例のもので、そのヴィンテージで評価の高かったものが揃う。ほとんどのワインはこのイベントのためにシャトーから直接調達されたものだ。その翌日、私はガトウィック空港からボルドーへ飛び、ボルドーの専門家、ビル・ブラッチ氏主催のソーテルヌ2009ヴィンテージの試飲会を行った。その翌週は、このヴィンテージが今どの段階にありどこに向かっているのか、リアルな感覚を得るためにいくつかのシャトー訪問も計画した。

2009についてのかなり驚くべき真実は、若い時は素晴らしさも美味しさも一貫していたものが、今日の熟成の状態に関して言うと、一貫性はなく、様々なステージにあるということだ。すでに素晴らしい状態だがもう少し熟成させる価値のあるもの、すでに疲れ始めているもの、そして、「すごい」経験をしたいのであれば、抜栓するにはまだ若すぎるものまである。

もし、ビッグなフルボディで熟してアルコールが高いスタイルのものは熟成が加速して進んでいる、と言えればもちろん簡単なのだが、そんなに単純明快ではない。今日、これだけ歴史があって実力もあるワイン産地で語られない1つのタブーとして、欠陥の発生がある。2009年の場合、その欠陥が重要な要因であったようで、以前注目を集めた人たちが高みから引き摺り下ろされている。品種や生産地区の限定なく、意外と多くのワインが熟成前に酸化しているように見える。いくつかのワインで、ブレタノマイセスの副産物として生成される独特な香りや時折立ち上る揮発酸が、フルーティーさを消し去り田舎っぽさを与えてしまうのは、ブレット嫌いにとって驚くべきことではない。2009年のブレットは、右岸のワインより、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の左岸のワインにより影響を与えたようだ。そうは言っても、メドックのカベルネ主体のワインで汚れなく清潔なものは、偉大さという点では右岸のメルロー主体のワインより可能性が高い傾向にある。

しかし、事態を大局的に捉えると、明らかな欠陥がある2009年のワインは稀だった。それでもなぜ、スタイル・ぶどう品種・生産地区の区別無く、全てのワインの熟成が非常に異なる速度で進んでいるのか、ということを、これらのわずかな欠陥がまさに説明しているように思われる。

熟成においてのスタイル、純粋さ、優雅さ、表現力という点でトップに立つのは、ラトゥール、シュヴァル・ブラン、ペトリュス、モンローズ、コス・デストゥルネルそしてオー・ブリオンだ。これらの素晴らしいワイン達(中でも特にシャトー・ラトゥール)は、まるでボトリング時から全く変わっていないかのように見える。今すぐにも味わえる、なんともうっとりしてしまう美味しさだが、この誘惑と戦わなくては!なぜなら、20年後にはあなたの心を圧倒し吹き飛ばすくらい素晴らしくなるからだ。

2009年か2010年かという難問に戻るが、はっきりしているのは2009と2010が非常に異なるスタイルであるということだ。もし、2010ヴィンテージのワインだけがタイムカプセルに長い間入れられ、あなたの子供や孫たちに発見されるまで何年も忘れ去られていたとしたら、2009ヴィンテージの中で最も熟成スピードの遅いワインですら、最初から、そしてその後もずっとゴージャスと言われることだろう。この素晴らしい二つのヴィンテージの両方を好きになって、それぞれのスタイルを楽しんで欲しい。

さて、あなたのセラーの2009ヴィンテージだが、どのくらいすぐに飲めるのだろう?いくつかのワインは既にその状態にある。それ以外のワインについてだが、もしあなたが、力強くて果実味に富み、タンニンが豊富で酸は柔らかで滑らか、そんなタイプを愛する方なら今が飲み頃なのでは?具体的には、このレポートのために最近試飲した全てのワインについて、予想される最適な飲み頃をデータベースにアップデートしてある。是非楽しんで欲しい!

2019年04月08日